歯周病と歯肉炎は何が違うの?症状の違いや予防する方法をご紹介
更新日:2023.03.18
歯茎の病気には、歯肉炎・歯周病・歯槽膿漏と呼ばれるものがあります。歯肉炎は改善の見込みがありますが、進行した歯周病や歯槽膿漏は元に戻せません。この記事では、それぞれの症状や見分け方、治療について歯科衛生士の島田千歌が解説します。手遅れになることのないように、ぜひこの記事を参考にして日々のケアを行いましょう!
目次
歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられる
「歯周病」という言葉も、一般的に知られるようになりました。実はこの中に「歯肉炎」や「歯槽膿漏」も含まれています。歯周病の進行度によって、名前が変わると思っていただくとわかりやすいかもしれません。それぞれについてご説明していきます。
歯周病とは、漢字からもわかるように「歯の周り(歯茎や歯槽骨)に症状が起こる病気」のことを指しています。歯周病は、まず歯茎のみの炎症から起こり、進行するにつれて歯を支えている顎の骨にまで影響を及ぼす病気です。
この歯茎のみの炎症のことを「歯肉炎」といい、それ以上に進行した状態を「歯周炎」と呼んでいます。
では、歯槽膿漏とは何でしょうか?以前は、歯周炎のことを「歯槽膿漏」と呼んでいました。
こちらも漢字をみるとわかるように「歯槽(歯が埋まっている所)から膿が出る病気」つまり、歯周病がかなり進行した状態を指します。
歯肉炎も歯槽膿漏も歯周病の一部のことで、その進行度によって異なった呼び方があるということです。
歯肉炎と歯周炎の違い。見分ける方法は?
歯肉炎や歯周炎は「進行度による違い」でした。歯周病の進行度は、「歯周病の検査」と呼ばれる検査を行うことで知ることができます。歯と歯茎の境目には「歯肉溝」という浅い溝があり、歯周病によってこの深さが変化するのです。
ここでは、歯肉炎と歯周炎の症状の違いをお伝えしていきます。ご自身に似たような症状がないかどうか、ぜひ歯茎を観察してみましょう。
歯肉炎
健康な歯茎はピンク色で、歯と歯の間の歯茎は引き締まっており、三角形です。健康な歯茎の歯肉溝は3mm以内ですが、歯周病の進行度に比例して段々と深くなり「歯周ポケット」と呼ばれるようになります。また歯茎は赤く丸みを帯び、腫れて膨張することで、歯周ポケットも4mmと深くなっていきます。歯磨きをした時に出血が見られる場合もあるでしょう。
歯周炎
歯周炎はその程度により「軽度・中等度・重度」と分けられています。各症状は以下のとおりです。
《軽度》
歯茎の炎症が歯肉炎に比べて強くなり、歯茎の炎症だけにとどまらず、歯を支えている顎の骨まで溶け始めた状況です。歯周ポケットは4mm以上と深くなります。
《中等度》
歯茎の炎症が著しく、出血のほかに膿が出ることもあります。歯には揺れが出始め、歯周病の原因菌が発生させるガスにより、口臭も気になってくるでしょう。
歯周ポケットは4〜6mmとさらに深くなり、歯ブラシでは届かない部分に汚れが溜まりやすくなります。そのままにしていると、より歯周病が進行しやすい状況です。
《重度》
中等度よりも歯茎の炎症や口臭が顕著になります。歯の揺れが大きくなり、グラグラの状態です。噛むと歯が揺さぶられて痛みが生じるため、食事への影響も出てくるでしょう。
歯周病の最終段階では、歯が支えられなくなり抜けてしまいます。重度になるといつまで歯を持たせられるか、という段階です。
歯槽膿漏
「歯槽膿漏」と「歯周病」は、何が違うの?と思われる方もいらっしゃると思います。歯槽膿漏という言葉は、重度の歯周病のことだと思っていただくと良いかもしれません。歯周病がかなり進行し、歯を支えている顎の骨が溶かされ、膿が出ている状態を指していると思われます。歯周ポケットは6mm以上と深くなっていき、進行し過ぎると計測不可なこともあります。
また、歯茎の腫れや出血はもちろん、歯の揺れや口臭も生じているでしょう。
一昔前は良く使われる言葉でしたが、現在は歯科医院でもほとんど使われなくなっています。
歯周病の原因は?
そもそも歯周病になってしまう原因とは何でしょうか。
主な原因は「歯垢(プラーク)」です。
歯磨きをしないでいると、歯に白いモヤモヤしたものがついているのを見たことがないでしょうか。それが歯垢です。
歯垢は細菌の塊で、虫歯菌や歯周病菌がたくさん含まれています。よく食べかすと勘違いされている方もいらっしゃいますが、実は菌の塊だったと知るとゾッとしますよね。しかも、楊枝の先ですくえるくらいの1mgの歯垢の中には、およそ1億もの細菌が潜んでいるそうです。こんなにたくさんの菌が歯に残ったままになっているとしたら、虫歯や歯周病になるというのも納得がいくのではないでしょうか。
他にも、下記のような要因となるものがあると、歯周病を進行させる原因となります。
歯並びや噛み合わせが悪い
歯並びや噛み合わせが悪いと磨き残しやすくなります。磨き残しが多いと、虫歯や歯周病の原因となる歯垢が歯に留まりやすくなってしまいます。
歯ぎしりがある
歯ぎしりによって過度な力が加わると、歯周組織にダメージを与えてしまいます。
ストレス
ストレスは免疫力を低下させるため、歯周病菌への抵抗力も落ちてしまいます。
喫煙
タバコに含まれる一酸化炭素やニコチンにより、血管が収縮して歯周組織に酸素や栄養素が行き渡りにくくなります。また歯茎に炎症が起きても出血しにくい状態のため、知らないうちに歯周病が進行していることも珍しくありません。
不規則な食生活・飲酒
食事や飲酒をダラダラ続けたり、不規則にとることは、虫歯や歯周病のリスクを高めます。また飲酒をする場合は、歯磨きをせずに寝てしまうことも少なくありません。
全身疾患
特に糖尿病は、歯周病と大きく関係しているといわれます。血糖値のコントロールとお口の衛生状態は互いに影響し合うからです。どちらからもアプローチすることが大切になります。
チェックリストで歯周病レベルを把握
歯周病は、ある程度進行するまで自覚しにくいものです。そのため、知らず知らずのうちに患っていて気がついた時には中等度や重度になっていたということもあります。
ここでは、簡単にできる歯周病のチェックリストをご用意しました。
以下の項目のうち、当てはまるものはあるでしょうか。当てはまる項目をチェックし、ぜひ歯周病レベルを確認してみてください。
歯肉炎
- 歯茎が赤い、腫れている
- 歯磨きをした時に出血することがある
歯周炎(中等度)
- 歯茎の腫れが目立つ
- 歯と歯の隙間が大きくなってきた
- 歯が長くなったような気がする
歯槽膿漏(重度歯周炎)
- 歯磨きをすると毎回出血する
- 歯茎から膿が出る
- 口臭が気になる
- 歯がグラグラしている
- 噛むと痛みを感じる
チェックリストの項目で当てはまるものが下にあるほど、進行した歯周病になっており、早期に治療が必要だということになります。
歯周病は歯磨きで改善することもある
もし歯周病になってしまった場合は、できるだけ早いうちに気が付き、治療を受けることが大切です。なぜなら放って置いても歯周病が治ることはなく、悪化してしまうだけだからです。
歯周病の初期段階と言われる「歯肉炎」であれば、歯科医院での処置と念入りな歯磨きにより、改善する可能性があります。歯周病が進行して取り返しがつかなくなる前に、早めに治療をするようにしましょう。
しかし歯周炎になってしまうと、自宅でのケアだけでは改善が見込めません。まずは歯科医院で原因となった歯垢や歯石などを取り除き、適切なケアの方法を教えてもらいましょう。また必要に応じて、歯周ポケットの中の歯石を取り除いたり、外科的な処置が必要となる場合もあります。
いずれにしろ、歯周病が進行するほど改善も治療も大変になってしまいます。
定期的なメンテナンスで歯茎のチェックを
今回は、歯肉炎と歯周病、歯槽膿漏とは何かについてお話しました。歯肉炎は上手く歯ブラシが当たっていないと出血しないことも多く、自分では気が付かないことも少なくありません。
また、初期の歯周病は自覚症状がないため、「知らないうちに進行していた」という方も多くいらっしゃいます。
歯周病の原因は毎日の歯磨きで磨き残した「歯垢(プラーク)」です。日々のセルフケアを念入りに行うとともに、歯科医院での定期的なメンテナンスを受け、お口の健康を保てるように心がけましょう。
記事を読んでみて心当たりが多かった人もいたのではないでしょうか。口臭や歯周病は歯医者の定期的な受診で改善できるといわれています。
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