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虫歯菌は殺菌できる?歯医者で行うメンテナンス「3DS」による虫歯予防とは?

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虫歯予防

虫歯菌は殺菌できる?歯医者で行うメンテナンス「3DS」による虫歯予防とは?

虫歯菌は殺菌できる?歯医者で行うメンテナンス「3DS」による虫歯予防とは?

更新日:2023.02.26

虫歯予防

歯の治療はできればしたくないものです。そのため、虫歯を予防するための念入りな歯磨きや、フッ素を活用している方も多いと思いますが、そもそも虫歯菌は殺菌することはできないのでしょうか?
この記事では、虫歯予防のために歯科医院で受けられる「効果的なメンテナンス」について、歯科衛生士の島田千歌がご紹介します。

虫歯菌(ミュータンス菌)は虫歯の原因の1つ

汚れがついた入れ歯
虫歯の原因は、ミュータンス菌と呼ばれる虫歯菌です。虫歯菌のエネルギーになるものは、糖分、主に砂糖といわれています。
お口の中に糖分が入ってくると、虫歯菌はそれをエネルギー源として「歯垢」や「乳酸」を作り出します。歯垢とは、歯を磨かないでいると歯にくっついてくる白っぽい汚れのことです。

間違えないでいただきたいのは、歯垢は食べかすではなく、沢山の菌が含まれた菌の塊だということです。そして、この中に虫歯菌が含まれているため、磨き残しがあると虫歯になってしまうのです。

私たちは、歯磨きでこの歯垢を一生懸命に取り除いているわけですが、歯垢が強固な膜によって守られていることはご存知でしょうか?この膜は「バイオフィルム」と呼ばれ、一度作られてしまうと歯磨きでは落とすのは難しくなります。

参考:厚生労働省e-ヘルスネット「バイオフィルム(ばいおふぃるむ)」

虫歯菌は殺菌できる?

歯医者で治療している様子
虫歯菌も菌の一つです。アルコールで除菌ができる菌があるように、虫歯菌を殺菌することはできないのでしょうか?残念ながら、虫歯菌を殺菌して完全に除去することは難しいと思われます。

例えば​煮沸消毒をした場合、ミュータンス菌は60℃で30分、75℃だと15分で死滅します。​​とはいえ、食事の度に毎回食器類を煮沸消毒することは現実的ではないでしょう。
また食器用洗剤で洗った場合も、虫歯菌が死滅するわけではないため、多少残ると考えられます。このようなことから、虫歯菌を殺菌することはできないという結論に至ります。

しかし、がっかりするのはまだ早いかもしれません。なぜなら虫歯菌の数を「減らす」方法があるからです。虫歯菌の数が少なければ、その分虫歯のリスクを下げることにもつながります。

まずご自宅でできる方法としては、キシリトールやフッ素(フッ化物)の活用です。

キシリトール

キシリトールの作用を利用して、虫歯菌の数の減少を期待します。キシリトールガムなどを最低半年間、1日3回継続して摂取する必要があります。

フッ素

フッ素の配合された歯磨き粉や、フッ素ジェルなどを活用します。
特に虫歯になりやすい場合は「フッ化物洗口剤」という、うがい薬の使用を勧められることもあります。ご自宅では濃度の低いフッ素、歯科医院では濃度の高いフッ素を定期的に塗布してもらうと良いでしょう。

これらを上手に活用して、ぜひ虫歯予防に役立てましょう!

虫歯菌の殺菌は歯医者の「3DS」がおすすめ

上記ではご自宅でも行える虫歯菌を減らす方法をご紹介しましたが、歯科医院ではどのようなことができるのでしょうか。
歯科医院でできることとしては、フッ素の塗布やPMTC、3DSという方法があります。

フッ化物塗布

ご自宅と同様、フッ素を定期的に塗布することで、虫歯菌の活動抑制や数を減らすことにつながります。家でもできるならわざわざ歯科医院に行かなくても良いのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

市販で売られているフッ素は、安全性を考慮し濃度が低いフッ素です。それに対して歯科医院で塗布してもらえるフッ素は、濃度が高いため、効果も高いといえます。どちらも併用することで、より虫歯予防に役立ってくれるでしょう。

PMTC

PMTCとは「プロフェッショナル・メカニカル・クリーニング」の略で、歯科医院にて主に歯科衛生士が行う処置です。専用の機械とペーストを使って歯を磨くことで、虫歯菌の作り出した「バイオフィルム」を破壊することができます。

バイオフィルムは一度取り除いても、また作られてしまうため、定期的に歯科医院でPMTCを受けることが必要になります。そうすることで、お口の中の菌の数を減らすことができるのです。

PMTCについては以下の記事でも解説しています。

3DS

3DSとは「Dental Drug Delivery System」の略で、虫歯菌の除菌を目的とした予防法です。
PMTCによってバイオフィルムを除去した後、専用のマウスピースに薬剤を注入して歯に装着することで、虫歯菌の除菌を行っていきます。​​

虫歯になりやすい方や、細菌検査の結果で虫歯菌の数が多い方向けの方法で、妊娠を考えておりお子さまを虫歯にしたくない方が行うこともあります。

《3DSの流れ》

  1. 虫歯菌の検査をして、除菌が必要なお口の状態かどうかを確認します
  2. 除菌が必要な場合は、専用のマウスピースを作るための型取りを行います
  3. PMTCにより、歯の表面に貼りついたバイオフィルムを除去します
  4. マウスピースに薬剤を入れ、約5分間保持します
  5. ご自宅でホームケアを行っていただきます
  6. 結果を確認して終了です

このような処置を行うことで、虫歯菌の除菌をすることができます。保険適用の診療ではないため、希望される場合は自由診療になります。費用は歯科医院によって異なるため、事前に確認するようにしましょう。
しかし、こちらを行っても虫歯菌を完全に除去するものではありません。処置後は、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受け、お口を良い状態に保てるように心がけることが大切です。

また、3DSの手順については以下の記事でも紹介しています。

虫歯菌の数を減らしてリスクを下げましょう

今回は、虫歯菌の殺菌はできるのかどうか、という点についてお伝えしました。虫歯菌を完全に除去することはできませんが、その数を減らすことで虫歯のリスクを下げることにつながります。
ご自宅では念入りな歯磨きはもちろん、キシリトールやフッ素を活用しながら、定期的にPMTCなど歯科医院でのメンテナンスも受けるようにしましょう。
それでも虫歯になりやすい方や、検査の結果虫歯のリスクが高い方は、3DSという方法を検討されてみるのも良いかもしれません。

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