うがい薬(洗口液)で歯周病は治る?歯磨きとセットで行うことが大切
更新日:2023.06.21
歯科衛生士としてお話を伺う中で「うがい薬(洗口液)は歯周病にいいの?」とご質問をいただくことがあります。健康なお口を保つために、効果が期待できるなら取り入れたい、という方もいらっしゃるでしょう。今回は歯周病予防のためのうがい薬や、効果的な使い方について歯科衛生士の島田千歌がご説明いたします。
目次
歯周病を治すにはうがい薬が効果的?
ここでお話しするうがい薬は、洗口液やマウスウォッシュと呼ばれているセルフケアアイテムです。ドラッグストアなどに行くと、様々な効能の書かれたうがい薬が陳列されていますよね。これらは歯周病対策に効果が期待できるものなのでしょうか。
まずは、歯周病の原因から考えていきましょう。
歯周病の原因
歯周病は歯茎の腫れや出血から始まり、進行すると骨が溶かされ歯に揺れが生じ、最終的には歯が抜けてしまうという病気です。
原因は、歯に付着した歯垢(プラーク)という細菌の塊です。歯垢の中には歯周病原菌が含まれており、これらの出す毒素によって歯茎や歯を支えている顎の骨に炎症を起こすといわれています。
そのため歯周病を予防するためには、できるだけこの「歯垢(プラーク)」を除去する必要があります。うがい薬は、歯垢を除去する上で役立ってくれるアイテムなのです。
うがい薬の効果
うがい薬が歯垢へ作用する方法は、2通りあります。ご自身が使うタイミングに合った特徴のうがい薬を取り入れるようにしましょう。
①プラークの表面に作用するもの
歯やプラークの表面に作用し、プラークが作られるのを抑制する効果が期待されています。主に使用されている成分には、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)や塩化セチルピリジニウム(CPC)などがあります。
②プラークの深部に作用するもの
プラークの深部まで浸透する成分を利用しており、プラーク自体への殺菌作用があります。主に使用される成分は、ポビドンヨードやエッセンシャルオイルなどです。
このように、うがい薬にはプラークが作られたり付着するのを抑制する効果が期待されています。歯周病だけではなく、虫歯予防にも活用できるでしょう。
また、お口の中を清潔に保ってくれるため、口臭予防にもおすすめです。
うがい薬だけでなく正しい歯磨きが必須!
うがい薬は歯周病予防に効果が期待できますが、うがい薬を使えば十分なのかというと決してそうではありません。
プラークの表面は「バイオフィルム」と呼ばれる強固な膜で覆われており、これがバリアのような役目をしているからです。
バイオフィルムとは
バイオフィルムについてご理解いただくために、キッチンやお風呂の排水溝を思い浮かべてみましょう。お掃除をする時、ブラシやスポンジなどを使って、擦って落とすのではないでしょうか?
実は、あのヌメリも「バイオフィルム」です。ただ水を流したり洗剤をかけたりしただけでは、落ちないですよね。
プラークもそれと同じで、うがい薬でゆすいだだけでは落ちません。歯ブラシなどを使って、しっかりと擦って落とす必要があります。丁寧な歯磨きを行ったうえでうがい薬を使えば、歯周病予防への効果がより期待できるでしょう。
おすすめのうがい薬を使うタイミングと回数
うがい薬は、歯磨きと併用することが欠かせません。次に、どのようなタイミングで取り入れたら良いのか、1日の使用回数はどのくらいなのかについてご説明いたします。
基本的には、起床後や歯磨きの後・就寝前などに用いることが多いでしょう。しかし、うがい薬の作用の仕方によって、取り入れると良いタイミングが異なります。
①歯やプラークの表面に作用するもの
プラークが作られるのを抑制する作用があるため、歯磨き後に使用すると良いでしょう。新しくプラークが作られるのを防ぐことで、お口の中のプラークを減らすことにつながります。
②プラークの深部に作用するもの
プラーク自体に作用するため、歯磨き後すぐではなく、プラークが作られてからの2〜3時間後に用いるのが良いでしょう。付着したプラークに浸透し、殺菌作用を働かせてくれます。夕食後に歯磨きをして、就寝時間まで時間がある方や、起床後などにおすすめです。
ぜひこちらを参考に、ご自身の生活スタイルに合ったうがい薬を取り入れてみましょう。
また、1日に使用する回数は2〜3回ほどに留めて置くことも大切です。なぜなら、うがい薬は歯周病菌や虫歯菌などだけではなく、お口の中に存在する常在菌も殺菌してしまうからです。たくさん使えばそれだけ効果が期待できる、というわけではありません。
実際にお使いになる商品の裏側に記載されている使用方法を参考にして、正しく使うようにしましょう。
うがい薬を上手に取り入れ、歯周病予防に生かしましょう
歯周病予防のためには歯垢を取り除く必要がありますが、その方法としてはまず「歯磨き」が前提です。
できるだけ歯ブラシなどによってプラークを除去した上でうがい薬を用いることで、歯周病予防効果が期待できます。うがい薬はあくまでも歯磨きのサポート役なのだ、という認識で上手に活用していきましょう。