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海外の歯科医療を紹介!口腔ケアはどうなっている?【イギリス編】

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海外の歯科医療を紹介!口腔ケアはどうなっている?【イギリス編】

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海外の歯科医療を紹介!口腔ケアはどうなっている?【イギリス編】

更新日:2022.11.18

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口腔ケアや歯の予防医療は健康的な生活に欠かせませんが、日本では意識している人が多くありません。一方、海外では真っ白な歯や綺麗な歯並びに自信を持っている人が多いイメージがありますが、日本の歯科医療と比べて一体どんな違いがあるのでしょうか。
イギリスの歯科医院で働いた経験のある私が、実際に見たイギリスの歯科医療や口腔ケアについてご紹介していきます。

日本と似ているイギリスの歯科医療制度

日本では、すべての国民が何かしらの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」を採用しています。そのため、歯科医院の窓口では1〜3割負担で治療を受けられるのが一般的です。また、保険診療の他にもセラミックの詰め物や矯正治療、ホワイトニングなどの自費診療も高い人気があります。

一方イギリスでは、National Health Service(NHS制度)と呼ばれる国民保健サービスがあります。NHSは税金を元に運営されており、原則受診時は無料で医師の診察を受けることができます。
歯科医療に関しては基本的には有料ですが、治療内容ごとに値段が分かれています。例えば、歯科の定期検診は一番安い設定で£23.80(4,000円弱)なので、日本のそれと大差はないでしょう。

値段に大きな差がないにもかかわらず、イギリスの定期検診の受診率は約70%と言われています。イギリスではこのNHSのおかげで定期検診の受診率を高く保っていると言っても過言ではありません。一部のデータでは、日本の受診率は10%未満とされています。

〜執筆者のコメント〜
筆者が働いていたイギリスの歯科医院ではプライベートの診療がメインで、定期検診や虫歯の治療だけでなく矯正治療やインプラントなど幅広く行なっていました。例えば矯正治療の途中でも、何かあった時にはすぐに診てもらえるのはプライベートのメリットだなと感じました。かかりつけ医を持つことで信頼関係を築き安心感が生まれますし、歯科に対する不安の軽減にもつながります。
痛くなってから受診するのでは手遅れになってしまう可能性もあるため、どうかより多くの人に定期検診に足を運んでほしいと願うばかりです。

イギリスの歯科医療の課題

イギリスのイメージ

イギリスの予防歯科に貢献しているNHSですが、日本では意外に思うような課題も存在します。

例えば、NHSでは詰め物や被せ物の治療を低価格で受けられますが、それ故に低品質な材質が目立ちます。長い目で見ると自費診療(プライベート診療)の高品質な材質を好む傾向が強くなるため、定期検診はNHSで、その他の治療に関してはプライベート診療で診てもらうという使い分けをしている人も少なくありません。

さらに、NHSでは治療内容の制限や自費診療の患者を優先するなどの理由から、歯科の予約は非常に取りにくいとされます。
もしイギリスに渡航予定の方がいれば、痛みが出てもすぐに歯医者を受診できないかもしれません。仮に診てもらえたとしても、高額になってしまう恐れがあるので、日本でしっかりと治療を終えてから渡航されることをおすすめします。

出典:外務省「世界の医療事情 英国」

イギリス人の友人の歯科事情

次に筆者の友人の例からイギリスの歯科事情をご紹介します。
筆者のイギリス人の友人は半年に一度、NHSで定期検診を受けている方です。そのおかげで長年虫歯とはご縁がないとのこと。急を要する治療でない限り、NHSを上手に活用するのは賢い選択といえるでしょう。

また、定期的なクリーニングや虫歯のチェック、歯磨き指導などを受けることによって普段の歯に対する意識が変化しました。毎日の歯磨きに寝る前のフロス、甘いものなどの食習慣も気をつけるようになったそうです。

日本でも、3〜6ヶ月に一度の歯科定期検診を受診する方がいますが、そのくらいのスパンでチェック出来れば、仮に虫歯ができたとしても早い段階での対応が可能です。結果として詰め物や神経の治療まで進まずに済むことができるでしょう。

〜執筆者のコメント〜
当時10代だった筆者の友人によると、イギリスの矯正治療は無料になる場合もあるとのことです。
18歳未満で歯科医師が必要と判断した場合、NHSでは矯正治療を無料で行うことができます。日本では矯正治療は高額で簡単には決めかねるものだと思いますが、このような制度があるのは大変羨ましい限りです。国によって似ている点、異なる点がそれぞれあって面白いなと感じます。

治療よりも予防の時代

実際にイギリスの歯科医療と比較すると、日本の歯科医療の特徴も見えてきます。定期検診以外の治療も保険の範囲内で安く受けられるというのは日本の長所ともいえますが、それ故に虫歯が悪化するギリギリまで歯科医院に行かないという人も多いのではないでしょうか。
長い目で見ると定期検診を受ける方が、生涯に支払う治療費は結果的に安く抑えられるといわれています。

日本の医療の良さを残しつつ、歯科定期検診の質の向上を図り、歯の重要性をより多くの人に理解してもらうことが重要です。一度手をつけた歯は二度と再生しませんし、本来の健康な歯に勝るものはありません。

日本とイギリス両国共に一長一短ありますが、歯をより健康に保つには虫歯や歯周病の予防がとても大切です。そして、それは定期検診や日々のセルフケアによって実現することが十分に可能です。お口の健康はからだの健康といわれる現代、より長く健康に暮らすためにもぜひ毎日の歯磨きから意識していきましょう。

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