バイオフィルムを除去するには?自宅でできるセルフケアの方法を解説!
更新日:2025.11.16
「毎日歯を磨いているのに、なぜか虫歯や歯周病になってしまう」そんな経験はありませんか?その原因は、口の中に形成される「バイオフィルム」かもしれません。
バイオフィルムは、通常の歯磨きだけでは完全に除去することが難しい厄介なものです。本記事では、バイオフィルムの正体から自宅でできる効果的なセルフケアの方法まで、詳しく解説します。
目次
お口の中にできるバイオフィルムとは?
バイオフィルムとは、微生物が集まって形成された膜状の細菌の集合体です。
排水溝やキッチンの三角コーナーで見られる「ネバネバしたヌメリ」を想像してみてください。実は、あれと同じものが私たちの口の中にも「口腔バイオフィルム」として存在しているのです。
バイオフィルムは、歯磨き後8時間が経過すると歯の表面に細菌として付着し、仲間を増やし始めます。そして48時間が経つと急速に菌が成長し、72時間後には完全なバイオフィルムとなります。
歯垢とバイオフィルムの違い
歯垢(プラーク)とバイオフィルムは、密接に関係しています。食べかすや細菌の代謝物で形成された歯垢が、口内に長時間とどまって膜のようになることで、バイオフィルムと呼ばれる状態になります。
歯垢は水などでは簡単に流れませんが、バイオフィルムはさらに粘性が強く、歯磨きだけでは取り除けないことが多いのが特徴です。つまり、バイオフィルムは歯垢よりも強力で除去が困難な状態といえます。
バイオフィルムができる原因
バイオフィルムが形成される主な原因を見ていきましょう。
磨き残しや不十分な歯磨き
バイオフィルム形成の最も大きな原因は、磨き残しや不十分な歯磨きです。
歯ブラシが届きにくい部位には細菌が残りやすく、時間の経過とともに細菌がバイオフィルムに変化していきます。特に、歯と歯の間、歯と歯茎の境目、そして奥歯のかみ合わせの部分は汚れが残りやすい箇所です。
また、歯並びが悪い場合は歯が傾いていたり重なっていたりするため、清掃が特に難しくなります。その場合は鏡を使いながら、すべての歯面にブラシが届いているかを確認しながら磨くことが重要です。
唾液の分泌量低下
唾液には歯垢を洗い流す自浄作用がありますが、この唾液の分泌量が低下するとバイオフィルムが形成されやすくなります。
口呼吸、加齢、ストレス、薬の副作用などで唾液が減少すると、口内の自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすくなります。喫煙や水分をとらない生活習慣は唾液の分泌量が減りやすく、口内の汚れを洗い流す機会が減少するため、バイオフィルムの形成につながってしまいます。
生活習慣の乱れ
日々の生活習慣も、バイオフィルム形成に大きく影響します。
砂糖は細菌の餌になるため、甘いものを多く摂取する方は歯垢やバイオフィルムが蓄積しやすくなります。特に、間食の摂りすぎには注意しましょう。
また、睡眠不足やストレスは免疫力を低下させ、口内環境の悪化につながります。
バイオフィルムを放置するとどうなる?
バイオフィルムを放置すると、口内にさまざまなトラブルを引き起こします。
虫歯の発生
虫歯の原因となる虫歯菌は、食事による糖を分解して酸を作り出します。バイオフィルム内で産生された酸は、徐々に歯のエナメル質を溶かし、虫歯を引き起こします。初期段階では痛みなどの症状がほとんど現れませんが、進行すると神経にまで達し、激しく痛むようになるでしょう。
歯周病の進行
歯周病を引き起こす細菌が歯垢やバイオフィルムとともに蓄積すると、歯茎が炎症を起こして赤く腫れ上がります。
歯周病は症状がある程度進行するまで自覚症状が現れにくい病気です。重症化すると歯を支える骨が溶け、歯が抜け落ちる原因になります。
口臭の悪化
バイオフィルム内に含まれる細菌が、メチルメルカプタンや硫化水素を主成分とした強い臭いのするガスを生成します。これらは卵が腐ったような臭いを放ち、口臭の原因となります。
バイオフィルムを除去するために自宅でできるセルフケア
バイオフィルムの完全な除去は難しいですが、自宅でのセルフケアにより、バイオフィルムの形成を防ぐことができます。
バイオフィルムを意識した歯磨き
バイオフィルム除去には、正しい歯磨き方法が不可欠です。
まず、毛先の柔らかい歯ブラシを使用しましょう。硬すぎるブラシは歯茎を傷つける恐れがあります。歯ブラシは鉛筆のように持つ「ペングリップ」がおすすめで、余計な力が入りにくくなります。
磨くときは歯と歯茎の境目を意識して、歯ブラシを45度の角度で当て、小刻みに動かして磨きます。1本1本の歯を丁寧に、最低でも3分以上かけて磨くことが大切です。力を入れすぎず、歯ブラシの毛先が広がらない程度の優しい力で磨きましょう。
磨くタイミングに関しては1日2〜3回、特に就寝前は時間をかけて丁寧に磨くことが重要になります。就寝中は唾液の分泌量が減るため、細菌が繁殖しやすくなるからです。寝る前にしっかりと磨くことで、バイオフィルムの形成を防ぎます。
デンタルフロス・歯間ブラシの併用
歯ブラシだけでは落とせない歯間のバイオフィルム除去には、デンタルフロスや歯間ブラシが有効です。
デンタルフロスを使うときは40cm程度のフロスを両手の中指に巻き付け、歯と歯の間にゆっくりと挿入し、のこぎりを引くように前後に動かして歯垢を除去します。1日1回、就寝前の使用がおすすめです。
歯と歯の間に隙間がある方は、歯間ブラシが適しています。自分の歯間の隙間に合ったサイズを選び、歯間に挿入して前後に数回往復させます。サイズが大きすぎると歯茎を傷つける恐れがあるため、小さめのサイズから試してみましょう。
歯ブラシだけでは約60%の歯垢しか除去できませんが、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、80〜90%の歯垢を除去できるといわれています。
舌や頬の粘膜も清潔に保つ
バイオフィルムは歯だけでなく、舌や頬の内側にも形成されます。
舌の表面には舌苔(ぜったい)と呼ばれる白い汚れが付着します。これもバイオフィルムの一種で、口臭の原因となります。舌ブラシや柔らかい歯ブラシを使って、舌の奥から手前に向かって優しく掃除しましょう。力を入れすぎると舌を傷つけるため、注意が必要です。
また、食後にうがいをすることで、口内の食べかすを洗い流し、バイオフィルムの形成を遅らせることができます。さらに、洗口液を使用すると効果的になります。ただし、洗口液だけでは歯垢やバイオフィルムは除去できないため、必ず歯磨きと併用しましょう。
まとめ
バイオフィルムは、微生物が集まって形成された膜状の細菌の集合体です。磨き残しや唾液の分泌量低下、生活習慣の乱れなどが原因で形成されます。
自宅でのセルフケアとしては、毛先の柔らかい歯ブラシで歯と歯茎の境目を意識して小刻みに磨くことやデンタルフロス・歯間ブラシを併用すること、舌や頬の粘膜も清潔に保つことが効果的です。
しかし、バイオフィルムは自宅でのセルフケアだけでは完全に除去するのが難しく、定期的な歯科医院でのクリーニングと自宅でのセルフケアを組み合わせることが、口内の健康を保つために最も重要です。
歯科医院では専門的な機器を使ってバイオフィルムや歯石を除去し、フッ素塗布や歯磨き指導も受けられます。
毎日のセルフケアを続けながら、3〜6ヶ月に1回は歯科医院でプロフェッショナルケアを受けるようにしましょう。

